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レビュー

永遠の名曲

なつかしの織井茂子の歌声が聴けます。 「東京カルメン」や「君の名は」でお馴染みの彼女の名曲がズラリと揃って居ますよ。

どの歌にせよオリジナル原盤で聞けるのは、うれしい限りですね。 個人的には平野愛子や池真理子のほうが好きだったのですが、何とこの音盤を聴いてすっかり織井茂子のファンになりました。

こうした比較的「新しい」ナツメロよりも、戦前の松島詩子や淡谷のり子、李香蘭、渡辺はま子、ターキー、小夜ふく子、佐藤千夜子、三浦環、ひいては松井須磨子の肉声を1枚の音盤に収めて欲しいものです。


戦後の小津安二郎監督作品の中でもっとも軽妙コミカルな作品。何せ主役は父でも嫁ぐ娘でもない、下町の子どもたちなのだ。10件ほどの家が並ぶ住宅街の人々の日常が、子どもたちを主軸に捉えられていく。
各家の大人たち(佐田啓二、久我美子、笠智衆など)の交流や葛藤といったドラマもあるにはあるが、ほかの作品群に比べるとサラリと流されており、やはり子どもたちのわんぱくな言動の数々によって、市井の平和な日常の素晴らしさが淡々とほのぼのと醸し出されていく。小津監督は、松竹伝統の長屋ものを戦後復興してきた当時の新興住宅街に置き換えることで、昔も今も変わらない人々の温もりを描きたかったようだ。フラフープやテレビなど、当時流行のアイテムがさりげないユーモアのために機能しているあたりも、さすがの貫禄であった。(的田也寸志)

レビュー

幸せってなんだろう

 初めて見た小津映画でした。この映画に出てくる子供の兄弟が今まで見たどんな子供よりもかわいかったです。
 結婚前の娘や父親など家族を描き続けた小津監督の唯一とも言える、子供を中心とした映画だと思います。タイトルになっている『お早よう』というような気軽な建て前の言葉の味わい深さを教えられた気がしました。

 個人的に、ラースフォントリア―の『ドッグヴィル』を見た後に、この『お早よう』を連続で見たので、人の本音と建て前とどちらも重要だなぁとしみじみと考えさせられました。
 小津先生。大好きです。


レビュー

「喜びも悲しみも幾歳月」、「明日に架ける橋」、難破した水夫の話

 芸術家は弱いものの味方だったはずなんだ、というのは、太宰の言葉だが、〈弱いものの味方〉の元祖は、イエス・キリストである。イエスは言った。私は、正しい人を招きに来たのではない、罪人を招きに来たのだ。また、言った。丈夫なものに医者はいらない、私は病人のために来たのだ。映画や文学を受け入れる人も、また、同じだと思う。自分の生き方に迷いのない人、自分を「正しい」と信じて疑わない人、自分の欠点に悩まない人にとって、文学や映画は、必要ないのだと私は思う。かく言う私は、映画には全くと言っていいほど興味がなく、文学に関しては、太宰のほかはほとんど読んでいない。
 私にとって本作「喜びも悲しみも幾歳月」とサイモン&ガーファンクル「明日に架ける橋」と、太宰治が繰り返し語った、難破した水夫の話とは三つながら同義語である。「喜びも悲しみも幾歳月」では、主人公の燈台守が、大嵐の中、荒れ狂う波と闘いながら、命がけで燈台の灯を守る感動的な場面がある。燈台の灯を守ることは、船乗りの命を守ることである。燈台守の行為は、美しい。燈台守は、かくあるべきである。「明日に架ける橋」では、荒れ狂う波にかける橋のように、この身を横たえよう、という自己犠牲の美しい歌詞がある。難破した水夫の話では、燈台守一家の幸福なひとときを守るために、難破した水夫が命を落としてしまう。太宰は、難破した水夫のほうにスポットライトをあてたが、これは、太宰のミス・リーディングではないか(ちなみに堀部功夫氏は、太宰が探偵小説を好んだことを指摘している)。実は燈台守の行為にこそ、スポットライトをあてるべきではないのか。燈台守はその日、燈台に灯をともし忘れた。だから、水夫は難破し、命を落としてしまったのではないか。木下惠介さんは、太宰の難破した水夫の話を読み、私と同じように燈台守の行為を読み取り、燈台守の、あるべき姿を本作「喜びも悲しみも幾歳月」に定着させたのではないか。そんな気がする。


澪標(身を尽くし)の心を伝える貴重な作品

 つい先ごろ、女島に残されていた日本最後の有人灯台がついに無人化されましたが、かつての灯台はそこで生活しながら灯りを守る灯台職員たちの不屈の努力によって保たれてきました。灯台は往々にして辺鄙な岬の突端や崖の上、無人島などに位置していますので、職員の労働は勿論のこと、そこで生活を共にした家族の苦労は並大抵のものではなかったでしょう。
 かつて日本では河川や沿岸に立てられた航路標識のことを澪標(みおつくし)と呼びましたが、この語はよく「身を尽くし」と掛けられて、和歌にも詠まれました。灯台は現代の澪漂ですが、灯台を守ってきた職員と家族の人生は、正に「身を尽くし」という形容がふさわしいものだったのではないかと思います。
 この作品は戦前から戦後にかけて日本各地の灯台を転々としながら働いてきた灯台職員の人生を描いたもので、その仕事にかける情熱と家族や同僚たちとの絆に胸を打たれます。一見単調で淡々としているように見える労働と生活の中にこそある、人生の奥深さと豊かな愛情を感じさせてくれる名作です。